クロスを張り替えるときの「下地処理」は見えないけれど、とても大切な作業です。
凹凸や段差、ビス頭などの小さな違いや段差が、仕上がりの美しさを大きく左右します。
実は、下地処理の内容はどの現場でも少しずつ違い、「量が多い・普通・少ない」や「おおがかり・普通・軽微」といった違いが生まれることが普通に起きます。
この記事では、クロス張り替えで行う基本的な下地処理を中心に、どんな状態の壁をどのように整えるのかを実際の作業写真とともに分かりやすく解説します。
「自宅の壁はどのくらいの下地処理が必要なのか?」を判断できるようになると、見積書の意味や仕上がりへの納得感もぐっと高まります。

もくじ
クロス張り替えで行う下地処理とは?まずは作業内容を知ろう
クロス張り替えで行われる下地処理は、壁を平らで滑らか(段差無く、まっすぐ)に整えるための工程です。
この作業を丁寧に行うかどうかで、仕上がりの質や耐久性が大きく変わります。
たとえ新しいクロスを丁寧に貼っても、下地に凹凸や段差が残っていれば、光の加減で影が出たり、接着が弱くなったりします。
見た目を整えるだけでなく、クロスの長持ちにも欠かせない重要な作業です。
下地処理の基本は「パテ」「研磨」「シーラー」
下地処理の中心となるのがパテ処理です。
ボードの継ぎ目やビス頭を埋めるためにパテを塗り、乾いたあとで研磨して表面を均一にします。
仕上げ前にはシーラーを塗って、吸い込みや接着ムラを防ぎます。
これらの工程はすべて、壁を平滑にしてクロスを密着させるために必要な基本作業です。
サンゲツの→「施工要領|素材画像・商品関連資料」でも、パテとシーラーの適切な使い分けが推奨されています。
どんなときに下地処理が必要になるのか
古いクロスを剥がした後に紙残りが多いときや、クロスを剥がした時に、ボードの表面まで一緒に剥がれる、ボードが部分的に欠けている。
などの現象は下地処理が必要です。
また、ビス頭が深くボードにめり込んでいたり、過去にクロスを何度も重ね貼りしている場合も、段差が出やすくなります。
新築や築浅の住宅でも、日当たりや湿気の影響で部分的に浮きが出ることがあり、補修を行うことがあります。
つまり、どんな現場でも何らかの下地調整は必ず発生します。

仕上がりを左右する理由——見えない作業ほど大切
下地処理がしっかりしていないと、クロスを貼ってすぐは綺麗に見えても、時間が経つと膨れや継ぎ目の目立ちが出ることがあります。
壁がわずかに凹んでいるだけでも、光の方向によっては大きな影になります。
職人はこの「光の流れ」を考えながら、パテの厚みや研磨の方向を調整しています。
まさに、仕上がりの美しさは下地で決まるといっても過言ではありません。
下の画像は、ボードとボードの継ぎ目と、ビス頭のへこみを全てパテ処理した後の画像です。
見た目はこんなにまだら模様ですが、これが真っ平らな状態です。

「量」と「処理レベル」で変わる下地処理のボリューム感
下地処理と一口に言っても、その作業量や処理のレベルは現場ごとに異なります。
たとえば、築年数の長い住宅やリフォームを繰り返している家では、下地の傷みが多く「おおがかりな処理」が必要になることがあります。
逆に、新しい住宅では軽微なパテ補修だけで済むこともあります。
下地処理の“量”とは?面積と範囲で考える
下地処理の量とは、パテを塗る範囲や研磨する面積のことです。
例えば、部屋全体に段差やビス穴が多い場合は「量が多い」と判断されます。
一方で、一部の壁だけ補修すれば済むなら「量が少ない」となります。
この違いは見積金額や工期にも直結します。
詳しくは「部屋別のクロス張り替え費用【早見表】6畳・8畳・LDK」も参考になります。
処理レベルの違い——軽微・普通・おおがかりの目安
処理のレベルは、補修の深さや段差の大きさで決まります。
軽微なケースでは1回のパテ処理で済みますが、普通は2〜3回のパテ+研磨を行います。
おおがかりな場合は、ボードの不陸を直したり、シーラーを重ね塗りすることもあります。
リリカラの→「施工要領書」でも、下地の状態に応じた塗り重ねが推奨されています。
量×レベルで見る作業の違い(一覧イメージ解説)
量が多くレベルが高い下地処理ほど、時間も費用もかかります。
たとえば、1面全体に段差が多い場合は再パテ+研磨を数回行う必要があります。
軽微な補修は1時間程度で済みますが、おおがかりになると1日作業になることもあります。
そのため、施工前に職人と「どの程度の処理が必要か」を共有しておくことが大切です。

どんな状態の壁に下地処理が必要?写真で見る代表的な例
下地処理が必要な箇所は、決して特別な場所ではありません。
クロスを剥がしたあと、ほとんどの壁で何らかの補修が必要になります。
ここでは、リフォーム現場でよく見られる「凹凸」「段差」「ビス頭」「剥がし跡」など、基本的な下地の状態を紹介します。
凹凸や段差——石膏ボードやクロス継ぎ目に多い
クロスを剥がしたあとにボード継ぎ目がうっすら見えることがあります。
この段差は新築当初から存在するもので、経年とともにさらに目立つ場合があります。
パテで埋め、乾いた後に研磨して段差をなくすのが基本です。
もし古いパテが割れていたり、下のボードが動いている場合は、部分的な再施工が必要になります。
詳しい流れは→「クロス張り替え『すべての工程』養生〜仕上げまでを“見える化”しました!」でも写真付きで確認できます。
ビス頭や釘跡——浮き・サビ・沈みのチェックポイント
石膏ボードを留めているビス頭も、下地処理で見逃せない箇所です。
ビスが浮いていると、その部分が盛り上がって見える原因になります。
沈みすぎていると逆にくぼみが残ります。
正しくは面一(つらいち)まで締め直してから、パテで2回に分けて埋めるのが理想的です。
サビが出ている場合は防錆処理を施してから補修します。
こうした処理を怠ると、完成後にクロス表面に丸い跡が浮き出ることがあります。

剥がし跡・下地破損——クロスをめくった後に現れる問題
クロスを剥がしたときに、ボードの表面部分的まで剥がれることがあります。
これは接着が強いタイプのクロスや、施工から年数が経っている壁でよく見られます。
ボードの表面が部分的に剥がれたまま新しいクロスを貼ると、凸凹や密着不良、気泡の原因になります。
職人はまずスクレーパーで回りを丁寧に削り取り、パテで表面を滑らかに整えます。
不安が残る場合は、一度シーラーを塗って固めてからパテ処理を行うこともあります。
下地を整えることで、クロスの仕上がりや寿命が大きく変わります。

素材や築年数で変わる下地の違い
同じ凹凸でも、家の築年数や壁の素材によって処理の手間は異なります。
古い家ほど下地が柔らかく、ベニヤや石膏ボードの動きが大きくなるため、処理に時間がかかります。
素材ごとの違いを理解しておくと、見積や工期の理由も納得しやすくなります。
築年数で見る下地の痛み方と処理の変化
築10年前後の住宅では、ボード継ぎ目やビス部分の動きが少ないため、比較的軽微な下地処理で済みます。
一方、築20年以上の家では、乾燥収縮や下地の反りが進んでいることが多く、2回以上のパテ処理が必要になります。
経年劣化による下地のひび割れや痩せも見られるため、研磨後の粉残りをしっかり除去することが大切です。
石膏ボード・ベニヤ・既存クロス上貼りの違い
石膏ボードは扱いやすい素材ですが、継ぎ目とビス穴が目立ちやすいです。
ベニヤは硬くてパテがのりにくく、吸い込みムラが出やすいため、シーラーの下塗りが必須です。
既存クロス上貼りの場合は、接着強度の差に注意が必要です。
部分的に剥がれているとそこだけ膨らむことがあります。
詳細は「下地の凹凸を目立たせない!リフォーム用のクロスのメリット│在宅工事OK!」で詳しく紹介されています。
リフォーム用クロスを使う場合の下地調整
リフォーム用クロスは、一般的なクロスより厚みがあり、下地の凹凸をある程度隠せます。
ただし、すべての不陸を補えるわけではなく、あくまで“軽微な段差”が対象です。
ベースが波打っている場合は、先にパテでならすことが重要です。
製品ごとの施工条件は、→トキワの施工要領書にも詳しく記載されています。

下地処理の量と仕上がり・費用への影響
下地処理の量が多いほど、仕上がりは美しくなりますが、同時に時間と費用もかかります。
逆に軽微な処理で済む場合は短時間で終わりますが、仕上がりにわずかな陰影が出ることもあります。
「どの程度まで整えるか」は、職人と相談しながら決めるのが理想です。
量と仕上がりのバランスを理解しておくと、見積書の数字にも納得感が生まれます。
量が増えるとどうなる?作業時間とコストの関係
下地処理の範囲が広がると、乾燥時間と研磨の工程が増えるため、作業時間も比例して長くなります。
1部屋あたりでパテ量が多い場合、半日〜1日ほど追加されることも珍しくありません。
費用面では、一般的な住宅で+2,000〜5,000円程度が目安です。
→「【クロス張替え期間】6畳・1LDK・3LDKは何日?住みながらの工期と流れ」でも紹介されているように、下地の状態は工期を左右する重要なポイントです。
「軽微」「普通」「おおがかり」で見る作業時間の目安
作業のレベルごとに見ると、軽微な処理はパテ1回+研磨で1〜2時間程度、
普通の処理はパテ2〜3回+研磨で半日ほど、
おおがかりな処理では乾燥や再施工を含め1〜2日かかることもあります。
→日本壁装協会(WACOA)でも、下地処理の手順を「面精度・吸収・接着強度」の観点から定義しています。
作業内容を写真で記録しておくと、後の比較や施工保証の確認にも役立ちます。
仕上がりを均一に保つためのチェック方法と記録
施工後に壁全体を斜めから光を当てて確認するのがおすすめです。
凹凸が残っている場合は、光の影で容易に判断できます。
この方法を使えば、部分的な段差やパテの未処理箇所を早期に発見できます。
また、スマートフォンで撮影しておくと、職人との共有にも便利です。
リフォーム後の満足度を高めるために、施工途中での確認を積極的に行いましょう。

まとめ
クロス張り替えの下地処理は、見た目には分かりにくい作業ですが、仕上がりの美しさを左右する大切な工程です。
壁の凹凸や段差、ビス頭の浮きといった小さな違いが、光の当たり方ひとつで大きな影になってしまうこともあります。
下地処理には、軽微・普通・おおがかりといった処理レベルの違いがあり、築年数や壁の素材によってその手間は変わります。
一見きれいに見える壁でも、クロスを剥がすとパテや紙残りの補修が必要なことがほとんどです。
この記事で紹介したように、「量」と「処理レベル」のバランスを理解しておくと、見積内容や工期への納得度がぐっと上がります。
施工前に職人と現場を一緒に確認し、どの程度の下地処理を行うかを共有しておくことが、満足のいく仕上がりにつながります。

