リフォームで壁を新しく作ったとき、見積書にある「下地処理」という項目。
この言葉、なんとなく分かるようで、実際に何をしているのかは分かりにくいですよね。
新規ボードは、クロスを貼る前の状態ではまだ表面がデコボコで、ビス穴や継ぎ目がそのまま残っています。
そのため、クロスを美しく、長く保たせるために欠かせないのが「下地処理」です。
この記事では、業者が新規ボードに行う具体的な下地処理、「見積書では見えない作業の中身」を、分かりやすく見える化します。
どこまでが標準で、どんなときに追加費用がかかるのかも分かる内容お伝えします。

もくじ
新規ボードとは?クロスを張る前に必要な準備工程
リフォームで間仕切りを増やしたり、新しい壁を立てたりするとき、一番使用されるのが新規ボード(石膏ボード)と呼ばれる素材です。
これは石膏を芯材とした建築用ボードで、軽量で加工しやすく、室内の壁下地材として一般的です。
しかし、新規ボード(石膏ボード)は設置した直後はまだ完成ではありません。
ビス穴や継ぎ目、表面の段差がそのまま残っており、そのままクロスを貼ると凹凸やシワが出てしまいます。
この状態を整えるために行うのが「下地処理」です。
リフォームで新しい壁を作るときに使われる「新規ボード」とは
新規ボードは、主に**石膏ボード(プラスターボード)**が使われます。
壁や天井の下地材として、強度と軽さのバランスが取れているのが特徴です。
DIYでは扱いやすい素材ですが、クロスを貼るにはプロによる下地調整が欠かせません。
ボードは表面が紙質のため、接着剤やパテの吸い込みが大きく、未処理では仕上がりが不安定になります。
そのため、専門の職人がパテやシーラーで吸い込みを抑え、平滑な下地をつくります。
新規ボード(石膏ボード)がそのままではクロスを張れない理由
ボードの継ぎ目やビスのくぼみは、見た目以上に深く、貼った後に線状の浮きとして現れます。
また、パテを打たずに糊を塗ると、ボードの吸水で接着ムラが発生し、クロスが部分的に剥がれることもあります。
つまり、クロス張り替え前に「パテ・テープ・シーラー」を組み合わせて、表面を均一に整える工程が必要です。
この作業が“見積書の下地処理”にあたります。
ボード設置後に行う下地処理の基本ステップ
新規ボード(石膏ボード)への下地処理は、一般的に以下の手順で行われます。
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ジョイント部のテープ貼り(補強)
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パテ処理(2〜3回塗り)で継ぎ目・ビス頭を平滑化
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研磨と表面の清掃
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シーラー塗布で吸い込み防止
この流れを経て、ようやくクロスを張る準備が整います。
詳しい作業全体の流れは、関連記事→「クロス張り替え すべての工程を見える化」でも紹介しています。
費用総論や在宅差、天井の影響は
→「クロス張替え費用|在宅と空室でいくら変わる?差額の根拠を徹底解説」
→「クロス張替え|天井も貼るべき?壁だけor壁+天井の費用差とメリット・デメリット」
こちらも参考にしてください。

見積書にある「下地処理」の内容を分解するとこうなる
見積書で「下地処理費」と書かれている場合、多くはジョイント処理・ビス頭処理・シーラー処理の3工程を含みます。
それぞれの目的を理解しておくと、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。
ジョイント処理:ボードの継ぎ目をテープとパテで補強する
新規ボードの継ぎ目(ジョイント部分)は、施工後に割れやすい箇所です。
そのため、ジョイントテープという補強材を貼り、上からパテを塗って補強します。
この処理は、石膏ボードメーカーの吉野石膏が公開する→「目地処理工法」でも推奨されています。
紙テープやメッシュテープなど種類がありますが、目的はどちらも割れ防止と表面の平滑化です。
ビス頭処理:金属部分をパテでフラットにする理由
ボードを固定するためのビス(ネジ)は、頭が少し凹んでいます。
このくぼみを放置すると、クロスを貼ったときに点状の凹みが透けて見えることがあります。
また、金属が露出していると、錆によってシミが浮く場合もあります。
職人は専用のパテを使ってビス頭を平らにし、乾燥後に再研磨して滑らかに整えます。
この作業は、クロスの耐久性にも直結する重要な工程です。
シーラー処理:ボードの吸い込みを防ぐ最終工程
パテ処理後のボードは、表面に微細な粉が残っています。
そのまま糊を塗ると、糊の乾燥ムラや接着不良が起きることがあります。
そのため、最後にシーラーと呼ばれる下地剤を塗布します。
これは、ボードの吸い込みを抑えて糊の密着を高めるための工程です。
詳しい基準は、→サンゲツ「一般ビニル壁紙 施工要領書」にも記載されています。
内部リンク参考:
外部リンク参考:

新規ボード特有の下地処理:ジョイント・ビス・角の仕上げ方
新規ボードは、既存壁の補修とは違い、「つなぎ目」と「角の保護」が非常に多く発生します。
そのため、職人はそれぞれの箇所に応じた処理を行い、クロスを貼っても凹凸や割れが出ないように整えます。
ここでは、見積書に書かれにくい現場の具体的な作業を紹介します。
ジョイントテープの種類と貼り方の違い
ジョイント部分は、石膏ボードを張り合わせた際の継ぎ目です。
この隙間をそのままパテで埋めると、経年でひび割れや線状の膨れが出てしまいます。
そのため、まずジョイントテープを貼って補強します。
紙製テープは伸びが少なく、仕上がりが滑らかになる一方、作業には熟練が必要。
メッシュテープは施工が早く、DIYでも使われますが、糊の吸い込みが早い分、プロはパテ層を厚く仕上げます。
この工程は、石膏ボード工業会の→「施工編(目地工法)」にも明記されている基本項目です。
ビス頭と周囲の段差をなくすためのパテ仕上げ
ボードを留めるビスは、1㎡あたり30〜40本ほど打たれています。
これを1本ずつ確認し、凹んでいる箇所をパテで2〜3回に分けて埋める作業が行われます。
1回で厚く塗ると乾燥時に収縮するため、薄く重ね塗りして均一に仕上げます。
乾燥後はサンドペーパーで研磨し、光を斜めに当てて影が出ないか確認します。
この細やかな作業こそ、職人の技術が現れる部分です。
入隅・出隅に使われるコーナービードの役割
新しい壁を作ると、角の出入り部分(入隅・出隅)が必ず発生します。
この角をそのままにしておくと、クロス貼り後に欠け・破れ・線のヨレが起こりやすくなります。
そこで使用されるのがコーナービードと呼ばれる金属や樹脂の補強材です。
角を直線的に保ち、クロスの貼り付け面を整えるためのパーツで、強度も見た目も向上します。
ビード処理は特に新規壁で重要な工程です。
参考リンク:サンゲツ「施工要領|素材画像・商品関連資料ダウンロード」

新規ボード下地処理で追加費用が発生するケース
新規ボードの下地処理は、面積や状況によって手間が大きく変わります。
見積書には「下地処理一式」とだけ記載されることが多いですが、以下の条件では追加費用が発生する場合があります。
予定外の壁を新設・増設した場合の「面積外作業」
リフォームで間仕切りを増やしたり、収納やニッチを追加した場合、クロス面積に含まれない下地処理が発生します。
新しく立てた壁は、既存壁のような仕上がり調整が一から必要となるため、パテ回数や研磨作業が増える傾向にあります。
詳しくは、関連記事「クロス張り替えの下地処理で増える費用と工期」も参考になります。
開口部や窓まわりなど手間のかかる部分
ドア枠や窓まわりなどの開口部は直線が多く、精度を求められるため、角部のパテ成形や面取り処理に時間がかかります。
さらに、ビス本数が多い箇所では、処理回数が増えることで人件費も上がります。
こうした細部の作業も“下地処理一式”に含まれていることを知っておくと安心です。
パテの層数や乾燥待ちが増える場合の費用変動
湿度や季節によって乾燥時間が延びる場合、施工日数が伸びることがあります。
職人は乾燥不良を避けるため、天候や室温に応じて作業ペースを調整します。
乾燥を待つ時間も工事工程の一部であり、急がせると後の剥がれにつながることがあります。
施工環境の重要性については、日本壁装協会のガイドライン→(https://www.wacoa.jp/)でも明確に示されています。

新しい壁を長持ちさせるために覚えておきたいポイント
新規ボードへのクロス施工は、下地の完成度で耐久性が大きく変わります。
施工後にすぐ問題が出るわけではありませんが、見えない部分の精度が後々の寿命を左右します。
クロスが長持ちする下地処理のチェックポイント
仕上がりを長く保つには、パテ処理・シーラー処理が均一に行われているかが重要です。
張り終えた直後では分かりませんが、光を当てると影のない滑らかな面が理想的な仕上がりです。
施工後1〜2日は急な換気や乾燥を避け、自然乾燥を待つこともポイントです。
業者に確認しておきたい3つの質問
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下地処理は何回パテを塗るか?
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乾燥時間はどれくらいか?
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シーラーは塗布しているか?
これらを確認しておくと、見積書に「下地処理」としか書かれていなくても、作業内容の違いが把握できます。
疑問を残さず、工程を説明してくれる業者を選ぶことが大切です。
信頼できる施工店を選ぶときの見極め方
信頼できる業者は、見積書に「ジョイントテープ処理」「パテ2回」「シーラー仕上げ」と具体的に記載しています。
また、「乾燥待ちを1日入れる」といった工程説明ができるかも重要です。
こうした姿勢のある業者は、仕上がりへの責任感が高い傾向にあります。

まとめ
新規ボードの下地処理は、クロス張り替えの中でも特に見えないけれど重要な工程です。
ボードの継ぎ目やビス穴、角の処理を丁寧に整えることで、クロスの密着が安定し、長く美しい状態を保てます。
見積書に「下地処理一式」と書かれていても、その中にはジョイント補強、パテの重ね塗り、シーラー塗布など複数の工程が含まれています。
これらは単なる作業ではなく、仕上がりと耐久性を左右する品質工程です。
もし、見積内容や作業説明が不明確な場合は、**「パテは何回塗りますか?」「シーラーは使いますか?」**など、具体的に質問してみましょう。
丁寧に説明してくれる業者ほど、施工品質にも自信を持っているはずです。
下地処理を正しく行えば、クロスは長持ちし、ひびや剥がれのトラブルを防ぐことができます。
新しい壁をつくるときこそ、見えない部分の品質管理が、住まいの快適さを支える要となります。

